一期一会

私の学生時代、お世話になった恩師の一人で、現在は精神科医として働いていらっしゃる方がいます。

その方は、歴史小説や大河ドラマが好きで、時々、歴史の話を私に話してくれ、それには、いつも『なるほど』思わせて下さったり、感心させられる事が多くありました。

 

その中で、彼に歴史小説の面白さを教えて頂いた事がありました。

その内容とは『歴史ドラマというのは、すでに結果や顛末は決まってしまっているが、その決まってしまった結末に至るまでのストーリーは作家や脚本家の描き方によって全く違った物語になる、そこが面白いのだ』というものです。

特に、『歴史の転換期やクライマックス辺りが最も劇的に描かれていてそこが一番の見どころである』ともおっしゃっていました。

 

その言葉に私もなるほど、と感心致しましたが、その後に続く彼の言葉が一番印象的であり、それは『自分が初めて患者さんと会った時には歴史ドラマの転換期にいるような気持ちになる』というものでした。

 

私なりにそのように感じる理由を考えてみると、精神科という診療科では、患者様の生活背景が病気と深く関わってくる事も多くあります。そのため、精神科医はとても詳細に患者様の生い立ちや環境を聴取しますので、治療を行う事自体が患者様とともに歴史を作っていくような作業に思えるのかもしれませんし、また、医師自身が患者様の歴史のひとつとなるように感じるのかもしれません。

 

美容外科においても、患者様自身はクリニックに足を運ぶまでの間に様々な困難や葛藤があった方も少なくはないものだと思います。

しかし、我々は精神科の医師の様に患者様の背景を聴取する事はほとんどありませんし、その必要もないのかもしれません。

ともすると、一見、希薄になりがちな関係性とも言えるため、私自身は一度一度の患者様との出会いを貴重な物として捉える心掛けが特に必要なのではないかと思います。

 

『一期一会』という言葉がありますが、美容外科にこそこの言葉が一番しっくりくるものだと感じています。

 

もともと『一期一会』という言葉は、茶道に由来しており、千利休が謳った言葉だといわれています。『御茶会での客人との出会いは、もしかすると一生に一度のもので、今後二度と出会えないかもしれない、だから、自身も客人もお互いに誠意を持って尽くしなさい』という意味です。

 

これを、我々の立場で考えるとするならば、患者様の多くは、沢山のクリニックをリサーチし、その中で自分が納得できるクリニックの選択をし、覚悟をもってご手術をお受け頂いております。

これは、何よりも私たちに対する患者様からの誠意といえるのではないかと思います。

 

クリニックは、そのような患者様からの誠意を受け取る訳ですから、私たちもカウンセリングから手術、アフターフォローに至るまでの全てにおいて誠意を尽くして取り組む事が『一期一会』を果たしたという事になるのだと思います。

 

以前に、当院で脂肪吸引をお受け頂いた患者様から『検診が終わってしまうと、もう水の森に来る事はないのかもしれない。そう思うととても、淋しいです。』との言葉を頂いた事がありました。

この言葉は、患者様から頂いた言葉の中でも、とりわけ私の心に響いた覚えがあります。

 

誰かに必要とされたり、惜しんで貰える事は人間にとって自分自身の存在意義を見出せたり、人に認めてもらいたいという承認欲求を満たしてくれるものだと思います。

我々が生きていく上で、最も励みとなるものは、このような誰かに必要とされている、というような感情なのではないかと思います。

それは、ビジネスの場だけでなく、友人関係や家族の間柄でも全く同じことが言えるでしょう。

そのような関係性が自分の周りに溢れていればきっと、その人の人生は幸せなのだと思います。

『一期一会』という気持ちで人との出会い・つながりを大切にし続けてこそ、相手にとっても自分が大切な存在になっていけるのではないでしょうか。

 

この気持ちを忘れずに、今まで出会えた方だけでなく、これから新しく出会えるであろう多くの患者様との時間を過ごせていければと思います。

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